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2001.2.2(くもり)
『4人4様』
「ごめんねー、キャディさん。」
「え?いいえ。」
スタートしたばかりのお客様にそう云われてキャディさんはくすっと笑った。
何を謝っているのかというと
「みんな見事にバラバラ!4人が4人とも同じところに打てば途中でいちいち止まらなくてもいいのにね。」
カートに乗せているお客様をキャディさんは一人一人違う場所で一人ずつ下ろしていく。
「キャディさんだって、その方が簡単でいいでしょう?同じところで4人下ろせば仕事も楽じゃない?」
「でも、4人4様のゴルフがありますからね。」
「ゴールは一緒だけどね。(笑)」
2001.2.3(はれ)
『調子』
朝早くスタートすると体が温まっていないので調子が出てくるまでしばらくかかるようだ。
5ホール目のティショットで真芯をとらえたお客様のドライバーは見違えるようないいショットだった。
「お、だんだん調子こいてきましたね、社長。」
「・・・。」
「あ?すみません、調子付いてきましたね社長っ!」
知〜らない。(笑)
キャディさんは黙って社長さんのクラブを預かった。
2001.2.4(あめ)
『体』
「ナイスショット〜!」
キャディさんは声を張り上げた。
すごくいいドライバーでフェアウェイの真ん中に飛んでいった。
「ドライバーはいいのよ、ドライバーは。なんでセカンドでO.B.すんだろ、俺。」
それからお客様はこう続けた。
「俺の体さ、ラフに向いてる気がするんだけど。」
「・・・。」
ぶっ。(笑)
全員顔を見合わせた。
「お前なぁ、なんなんだよ体がラフに向いてるって。」
「だってフェアウェイのあんないいとこにあっても打てないんだもん。」
確かにそういうところからばかりO.B.をしているように思われる。
「だから、俺の体はラフに向いてるんだよ。」
2001.2.6(はれ)
『半年振り』
「あらー、お久し振りでじゃないですか?」
「ああ、半年振りに来たよ。」
お客様はキャディさんにそう云った。
「それにしてもその頭、・・・苦労されてるんですねぇ。」
お客様の頭は真っ白になっていたのだ。
「ちゅうして。」
「・・・。」
頭は白髪になっても、中身は変わっていないらしい。(笑)
2001.2.12(はれ)
『端っこ』
カートにお客様のキャディバックを4つ積み終えてクラブ確認も終えて、さてスタート時間までも
う少しあるな、とキャディのA子ちゃんが時計を見たとき、
「ちょっと、このバック端っこに積んでくれない?」
とお客様が唐突に云い放った。
「・・・。」
たった、これだけのことなのに「切れる」キャディさんは割と多いのだ。
(>近頃の若いもんは些細なことですぐに切れる・・・)
「もう、イヤになっちゃう。スタート前から気分悪いわ。」
「まあまあ、落ち着いて。」
わたしは通りすがりにそう云った。
「バックを端っこに積んだらプレーが上手くいくかしら?そう思わない?」
「・・・。」
2001.2.14(はれ)
『ドラコン』
素晴らしいティショットだった。
この寒い風の吹く中、260〜270ヤードくらい飛んでる。
フェアウェイの真ん中にキープしたお客様は「よーし、ドラコンの権利は取った。」と云った。
キャディさんはクラブを預かりながらあれ以上は誰も飛ばせないだろうと思ったが
「あとはパーを取ればドラコンは俺のもんだ。」とお客様が云うので
「え?パー取らないとドラコンにならないんですか?」
と尋ねた。
「そうだよ、パー取らなくちゃ駄目なんだ。ほら、さっきのショートもパー取らなくちゃニアピ
ンにならなかったでしょ。」
云われてみたら確かにそのとおり。
ショートホールではパーを取らなくちゃニアピン没収、なんてよくある話だけど。
ロングホールもパーを取ってドラコンというのはとてもいい考えだと思った。
2001.2.15(はれ)
『絶句』
「やおちゃん、もう行くの?」
「うん、だってお客さんもうカートに乗って待ってるのよ」
「ふーん。」
確かに四人のお客様が早々にカートのスタンバイしている。
「おっ、キャディさん、前半より少し若くらなかった?」
ずるっ!(\_\;
やおちゃんのお客さんは真面目な顔をしてそう云った。
「ええ、さっきよりちょっと多めに塗って来ましたから!」
「・・・。」
しばしお客様絶句。
「だ、だろうと思ったよ!」
2001.2.16(はれ)
『腕』
谷越えのショートホールはレギュラー・ティから190ヤード。
お客様はバフィでかるくドローをかけてピンの手前に付けた。
「ナイスオンですっ!」
キャディさんはその感激しやすい性格を今日は一段と声高らかに現した。
「良かったか?」
前から思っていたがお客様の口調は天皇陛下とかが喋ってるようなそんな感じを思わせる。
「はい、ぴったりです。」
「そうか。」
キャディさんは何度も頷いてクラブを終った。
「今日は新しいドライバーを持ってきたから次のホールから使うことにする。」
「はい。」
キャロウェイのフォークアイともう一本マクレガーの新品のドライバーが入っている。
「しかし、クラブを何回変えても腕を変えないことにはなぁ。」
お客様はパターを手にして呟いた。
「そう思わんか?」
キャディさんはお客様のお年を考えるともう十分ような気がした。
だって75歳なんだもの!
今日のお客様はキャディさんの最も尊敬するお客様の一人でした。
2001.2.17(はれ)
『練習場』
キャディさんが練習場で練習しているとお客様がやってきた。
他には誰もいない。
お客様はキャディさんの3つ先の打席に場所を取り、芝の上から打ち始めた。
二人は並んで何球か打った。
しばらくするとお客様が振り返って云った。
「キャディさん、シャンクはしないよね?」
「シャンク・・・ですか?はあ、あんまりしたことないですけど・・・」
キャディさんはシャンクを最後にしたのはいつのことだったか真剣に考えた。
「しないならいいよ、シャンクするならここ危ないからさ。」
「・・・。」
お客様はキャディさんの右斜め前方にいた。
2001.2.18(はれ)
『球の跡』
お客様はドライバーを打つと必ず球がフェイスのどの辺りに当たっているのか確認した。
「うーん、こんなとこに当たってる。」
何回見ても自分の思ったところに球の跡は付いてないらしい。
キャディさんはお客様が見るとタオルで磨いて球の跡を消した。
こうしないと次に打ったときにどこに当たってるのかわからなくなるからだ。
「うっ、わーっ、だふった!」
お客様は云うか早いかすぐにドライバーのフェイスを目の前に持ってきた。
そして云った。
「・・・跡も付いてない。」
キャディさんはドライバーを受け取るとフェイスを確認した。
本当に球の跡がなかった。
いったいどこに当たって前に飛んで行ったんだろう。(^。^;)
2001.2.20(はれ)
『フック』
スタートホールには200ヤード先左にバンカーが見える。
「よーし、フェアウェイの右端から回してあのバンカーの先まで行ってやる。」
お客様はアドレスを取ると自分の打ちたい球をイメージしているようだ。
そう、うまく打てればいいんだけど。
・・・とキャディさんはいつもお客様を見て思う。
お客様はオープンスタンスでフェイスもやや開き気味でキャディさんはいかにも右に行きそう、
と思って見ていたがフックをかけると云うからには戻ってくるんだろうと思って見守ることに
した。
「ナイスショットー!」
球は綺麗に飛びだして行って、思い描く球筋のとおりに右からドローがかかってフェアウェイ
のセンターを・・・さらに左に曲がり左ラフのバンカーに消えた。
なんて球だ。
「よーし、フックしたぞー」
お客様は満足そうだったけどキャディさんはバンカーまで曲がらなくても、と思った。
「ほーら、フックしてるだろう、ティが。」
「・・・。」
お客様は今使ったティペッグを拾い上げるとキャディさんの顔を見てにこにこして云った。
ティかい!
2001.2.21(はれ)
『遠球先打』
「お先!」
グリーンでお客様が大きな声で云った。
あと1パットで入れる自信があるのだろう。
すると
「何云ってんだよ、まだ一番遠いよ。」
「お先じゃないよ、順番通りだって。」
「全然よってないじゃん。」
同伴者が云うにはそういうことらしい。
2001.2.22(はれ)
『小学生』
そのお客様のあだ名は「小学生」。
とにかく背が低い。
150センチ台の身長だと思われる。
もちろん、キャディさんよりも低い。
しかし、飛ぶ。
「あっ、変なとこ当たった。やば!」
お客様はコースをよく知っているだけに右から攻めていくつもりでいたのに左に引っかけたようだ。
キャディさんもそばで見ていてお客様が自分でいい球かそうでないか判断しているのがよくわかる
ので今のはいい球ではなかった筈だったが、
「あ、越えた。」
キャディさんとお客様は顔を見合わせた。
お客様が笑い出すのでキャディさんも一緒に笑ってしまった。
キャリーで240はいるであろうバンカーをその先のマウンドごと越えてしまったのだ。
「なんちゅう奴じゃ、あれを越えるか?」
同伴者はみんな身長がが170センチ以上で一番高い人は180センチくらいある。
「早う、打たんかい。」
お客様は大男たちを見上げて云った。
2001.2.23(はれ)
『シャフト』
「ナイスショットーっ!」
いい球だった。
本当にドライバーだけはいいな、とキャディさんはお客様をみて思った。
「おおー、よく飛ぶようになったじゃないか。やっぱりシャフトがいいと違うね〜」
同伴者も負けずにヤジを飛ばした。
・・・シャフトがいいんかい!?
2001.2.24(くもりのちあめ)
『マーライオン』
「シンガポールでマーライオンの付いたボール買って来たから1個やるよ。」
とお客様は無理矢理同伴者に赤い色のマーライオンの絵柄の入ったゴルフボールを手渡した。
「あっ!」
スタートホールで一発目に打ったマーライオンは左にひっかかってO.B.になった。
「今のマーライオン?いいよ、いいよ、まだあるからほら。」
スタートホールでマーライオンで「10」叩いたお客様は次のホールでマーライオンを使うことを迷った。
「いっぱいあるからいいから使えよ」
というお客様の励まし(?)にもう一度マーライオンでティショットをした。
「あっ!」
マーライオンはまたO.B.になった。
「俺にはマーライオンは合わないみたい。」
キャディさんはおかしくって笑いが止まらなかった。
2001.2.25(はれ)
『Swがない』
「キャディさん、僕のSwがないよ。」
「えっー!?」
あと2ホールで終わるというときになんてこと!
隣のキャディバックに混ざってないかと探してもお客様のSwはどこにも見あたらなかった。
「最後にどこで使ったか覚えてませんか?」
「覚えてない。」
速攻で答えるお客様にキャディさんは考えてから答えろよ、と思ったが口にはしなかった。
そして順番に前のロングは使ってない、その前のミドルは?
キャディさんとお客様は記憶を辿っていくことになった。
「さっきミドルで隣のホールに打ち込んだとこありましたよね?」
「うん。」
「下から7番アイアンで打ち上げてそれから急斜面の駆け上ってきたところでわたしがPwと
Swを渡しましたよね。」
「うん。」
「あのときグリーンに乗せたのはどっちで打ちました?」
「Pw」
「じゃ、Swは?」
「知んない。」
「そこだ!」
2001.2.27(あめ)
『悲劇』
「お客様、残りが調度・・・エッジまで200ヤードです。」
「まだそんなにあんの!?」
「ロングですから」
キャディさんは涼しい声で云った。
「よし、これで打つ!」
お客様は手にしたスプーンでライの悪い傾斜にアドレスを取ると続けて2回O.B.にした。
「クラブどうします?」
「これでいい」
そう云ってクラブを振った瞬間、ザクッと大きな音がして雨でやわらくなっていた地面ごと、、、
「あっ!」キャディさんは小さく叫んだ。
「マジ?」お客様は自分が打った球が前に飛んで行かずに下に落ちるのを見た。
お客様のほった大きなディボットの中にそのボールはあった。
「だるま落とし見たいですよね。」
キャディさんはやっとの思いでそれだけ云うとお腹をかかえて笑った。
(笑い過ぎちゅうに!すみません。でもお客様も一緒に笑ったの)
2001.2.28(くもり)
『スコア』
「・・・。」
まただ。
キャディさんはさっきからお客様たちの行動に対して云いたいことが一つだけあった。
「あの〜、とりあえず、グリーンやっちゃいましょうか?」
3人のお客様は振り返ると「え?」と間の抜けた顔をキャディさんに向けた。
3人とも同じ格好をしている。
グリーンに立っているのにティグランドの方を向いて、左手にクラブをぶら下げて、右手で指を折って
口はもごもご動いている。
「とりあえず、グリーンやっちゃってから、そてからスコア数えましょうか?」
キャディさんはそう云いながら器用にお客様の手からクラブをもぎ取るとパターを持たせて回る。
お客様は突然我に返る。
「あ、そうね。」
「パターね。」
「これにパターも足すのね。」
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