|
2000.6.27(あめ)
『雨』
やっと梅雨らしくなってきた。
雨の降る中のゴルフ・・・
キャディさんの仕事はいつもの倍は増えることになる。
まず、グリップを濡らしてはいけない。
クラブの受け渡しはグリップを濡らさないように注意し、
グリーンでの球拭きも最初の1回だけでなく
お客様のボールの具合を見てタオルを差し出しては
「拭きましょうか?」
と気をつけなければならない。
さらに常用カートの座席が雨で濡れていては
お客様が座れない。
お客様より先にカートに戻ってきて
(もちろん手にはクラブやパターを雨に濡れないように持っている)
クラブやパターをそれぞれのキャディ・バックに戻すと
カートの座席をタオルで拭いて
すぐに座れるようにしなければならない。
それと、傘。
今まで自分で差していた傘をグリーンに忘れてくる人・・・
はたまた、グリーンで邪魔になるからと言って
傘までキャディさんに預ける人・・・
しかも、一人が預けたら俺も俺もと
あとからあとから傘を渡す。
自分の物は自分で管理してくんないかなー
重くてこれ以上持てないっつうのっ!
20006.25(くもりのちはれ)
『シングルへの道』
ハンディ10は混戦模様だ。
クラブで取得するオフィシャル・ハンディは
「10」までは割とスムーズにもらえてしまう。
よって「10」で止まってしまっている人がたくさんいて
そこから一歩踏み出すためにしのぎを削っているのだ。
「10」から「9」になるとき・・・
それはクラブのハンディ・キャップ委員会からお声がかかり
「シングル審査ラウンド」を受けることになる。
ここでマナーが悪かったりしたものなら・・・
また次の機会に、ってことにもなりかねない。
シングルであるということはゴルフのスコアがいいだけではなく
人間性も含めてのマナーやエチケットを見られることになる。
・・・
彼女はハンディ・キャップは「10」だ。
「おはようございます!」
隣のカートにキャディバックを積み込んでいるのは
研修会で顔なじみの男性だった。
「あら、この間はどうも!」
彼女は笑って挨拶をした。
「最近、調子良さそうじゃない?」
「ええ、まあ。」
「まだ、「9」にはなってないの?」
そう言う、彼もハンディは「10」
まるで探りを入れるかのようにそう言ってきた。
「ああ、来月、声がかかってるんですよ。」
「・・・声って、」
彼の顔つきが変わった。
「まさかハンディ・キャップ委員会?」
引きつった声が妙におかしった。
「お先に〜」
ますます彼の顔が変わっていった・・・(笑)!
2000.6.24(あめときどきはれ)
『カッパ』
朝から薄暗い雲が空を覆っていた。
天気予報によるとこの日は雷を伴って
一日大雨という予報になっていた。
スタートして2ホール進んだところで
ポツポツと雨が落ちてきた。
降り出したら容赦なく降る。
キャディさんは準備していた上下のカッパを着込んだ。
次のホールに向かうと雨が止んだ。
日が差してくるとカッパの中はサウナのような蒸し暑さになる。
たまらずキャディさんはカッパを脱いだ。
そしてまだ2ホールくらい進むとまた雨が降り出した。
またカッパを着る。
そしてしばらくするとまた晴れる。
そして雨。。。。
「キャディさん、ずっとカッパ着てたら?」
お客さんがそう言った。
キャディさんはえ?なんでですか?という顔をした。
「だって、キャディさんがカッパ着てると雨が降らないんだもん。」
あっ、そう!
2000.6.23(あめときどきくもり)
『ナイス・キック!』
そのショート・ホールは
グリーン・エッジまで154ヤードあった。
「38・・・」
キャディさんが口の中で呟いた。
ピンがエッジから38ヤードのところに切ってある
という表示がティグランドにあったのだ。
つまり計算したら192ヤードの
ショート・ホールということになる。
「ひゃくきゅうじゅう?」
4人のプレーヤーはお互いの顔を見合わせた。
しかし、オナーは4番アイアンでピシッと打ってピンの真横に付けた。
「おおお〜〜〜」
皆がどよめく。
続く2番手のおじいちゃんはウッドを持って少し左にひっかけた。
が、ちょうど切り立った傾斜の角に球が落ちて
なんとピンに向かって蹴り返したのだ。
球はそのまま跳ね返ってグリーンにオンし
ピンに向かって転がって進んで行く。
その場にいた全員が声も出さずに見守っていると
カップの手前でようやく止まった。
「・・・ナイス・キック!」
キャディさんがそう言った。
2000.6.21(くもり)
『人生』
ティショットをした刹那、彼は叫んだ。
「木に当たれ〜〜〜〜〜っ!」
・・・?
木に当たれ?
キャディさんは首を傾げた。
左ドックレックのミドルホールの狙い目は右の山裾だった。
左はティグランドから200ヤードのところに
あごの高いバンカーがしいてあり、
その手前にはいかにもわざと持ってきた
といわんばかりの杉の木が立っていた。
その杉の木の右をすれすれで彼のボールは通り過ぎたのだ。
木に当たれば何処に跳ね返るか想像もつかない。
右か左か、それとも木の真下に落ちるか
キャディさんはひやひやしながら球の行方を見守っていた。
そんなときに「木に当たれ!」とは・・・
「当たるなーって言ったら、当たりそうだったから。。。」
「え?」
キャディさんには彼の言おうとしている意味が分かりかねた。
「人生も望むと意に反したことが起こるでしょ?
僕の人生は望んじゃいけないんだ。
何事も無欲。」
「・・・はあ。」
キャディさんはわかったようなわからないような返事をした。
2000.6.20(くもり)
『キャンセル』
9:03・・・
それが今日のキャディさんのスタート時間
30分前にカートを出して準備をする。
メンバーさまの紹介で4名様。
もちろん、その中の一人は紹介者でもあるメンバーだ。
スタート10分前・・・
誰も来る気配がない。
「どーする?」
キャディさんはスタート室の中に向かって言った。
「今、確認取ります!」
さっそく紹介者であるメンバーの勤務先に電話がかけられた。
「・・・出張、だそうです。」
「・・・出張?」
「あ、でも、会社に内緒でゴルフに来られる方もいらっしゃるので
会社の方は出張と思っていても本人は来るかも・・・」
「・・・あと5分しかないけど。」
キャディさんは少し意地悪そうな顔をしてそう言った。
「・・・とりあえず、時間まで待ちましょう!」
「つってもあと3分だけど・・・」
「・・・。」
結局誰も現れることはなかった。
2000.6.17(くもり)
『グリーン』
ショート・ホールはピンが一番奥に切ってあった。
理由は天気予報が雨の予報だったためだ。
グリーン・エッジまで150ヤードだったが
ピンはそこから30ヤードも奥に切ってある。
受けていて、かなり傾斜のついたグリーンは
晴れている日であればカップを通り過ぎた球が
折り返して戻ってくるほど急だ。
「キャディさん、これ斜めに見えるんだけど。」
グリーンの傾斜のことを言っているのだろうが・・・
キャディさんの目は笑っていた。
「斜めに見えるんじゃなくて、斜めになってるんですよ。」
「やっぱり?」
2000.6.17(雨のちくもり)
『今日はどんな日?』
ハーフ終わったところで次々にキャディさん達が
食堂に駆け込んで来る。
朝からの雨でみな頭から水をかぶったような格好をしている。
土曜日の今日はカレーだった。
だいたい、土曜・日曜はカレーかハヤシライスと決まっていた。
「ごめんねー、進まなくて!」
パートのやおちゃんが疲れた顔をして言った。
「そお?そんなことないけど、なんで?なんかそのコンペヤバいの?」
すると、”そのコンペ”に付いているパートさん3人が
「ヤバいなんてもんじゃないよ、前に進まないんだから。」
「わたしのとこさ、ティショットがティから落ちるだけ・・・」
「何それ?」
「だからさ、ティに乗せてクラブを振ったらポロっ
また乗せて振ったらポロって・・・
何回振っても飛ばないの。」
「・・・かわいそう、やおちゃん」
「お客さん、雨がひどいから止めるって言って
ハーフで上がっちゃった。」
「あらまあ。」
パートさん達は並んでカレーを食べながらほっとした顔をしていた。
そこへ大御所の今Pが帰ってきた。
「何、何、今日はそんなんばっかり?
うちもハーフでやめてくれないかしらー」
「あら、お宅のとこも大変なの?」
笑いながら誰かが聞き返した。
「雨だし転がらないでしょ、ばしゃっばしゃって
もう、右を見ても左を見てもそんなんばっか!」
みなカレーのスプーンを持ったまま笑い転げた。
部屋の東側の壁は大きな窓になっていた。
光が差してふいに部屋が明るくなった。
「あら、雨上がった。」
「ほんと、晴れて来たわね。」
Kさんがそんな外を見ながら呟いた。
「昼から雨がひどくなって雷も鳴るって言ってましたよ!
って言ったらお客さんやめるつって帰ったのよね。」
「・・・。」
2000.6.16(はれ)
「アイアンマン」
その2人はティ・ショットを全て
アイアンで打って行った。
「キャディさん、今日は2人で良かったって思ってるでしょ?」
「え?」
「こんな下手に付いてイヤだな〜って
こんなのが4人もいたら最低ー!とか思ってるに決まってる。」
「・・・そんなことは」
ないです、とははっきりとは言えなかった。
しかし、2人はドライバーを一切使わなかったが
アイアンの飛距離がかなりあるので
大して苦になる様子はなかった。
12番のロングホールは狙いの左バンカーまで220ヤードだった。
フロントからとはいえ、右側の丸い大きなくぼ地を避けて
左バンカー横のフェアウェイの一番狭くなったところ
に持っていくのは容易ではない。
3番アイアンの当たりはあまり良くはなかったが
方向がいいのとアイアンにしてはなかなか飛んでるのを見て
キャディさんはそう言った。
「ナイスショット〜!結構ランが出てますよー」
「あんなもんじゃない!」
彼は不服そうにそう言った。
キャディさん一瞬絶句したがおかしくなってつい苦笑してしまった。
2000.6.15(はれ)
『クラブ』
まず、キャディ・バックを見ると
だいたいどんな人だか予想が付く。
次にクラブを物色。。。
さらにクラブの並び方で性格と
ゴルフに対する思い入れが分かる。
キャディバックも
ウッドもアイアンもホンマ
パターはテーラーメイド。
しかし、アイアンもウッドもバラバラに入っていて
どれか1本を引き抜こうとすると
どれかが邪魔してクラブが抜けない。
キャディさんはウッドと一番上に2本入れて
アイアンを3番から順番に並べ直した。
下の段には9番、10番、11番と並べて
一番最後にSWを差し込んだ。
すると、このクラブの持ち主がやって来た。
たった今、キャディさんが順番通りに並べたクラブを
何も云わずに並べ替えている。
一番上の段にウッドを2本、その隣に
「3番アイアン、5番アイアン、7番アイアン、
9番アイアン、あと、サンド」
彼はそう云ってキャディさんを見た。
「あの・・・どうしてまたバラバラに入れ替えたんですか?」
「他のクラブは使わないから。」
「でも・・・綺麗に並べてた方が取りやすいですよ。」
またキャディさんが云った。
「うんん、これでいいよ。」
これでいいって・・・
クラブを取って渡す方の身にもなってみてくれっ!
こんなにバラバラに入れられたんじゃ
すぐにクラブ取れないじゃないか・・・
2000.614(はれ)
『バーディの後』
その人は3ホール目のミドルでバーディを取った。
次のティ・ショットはもちろんオナーだった。
「バーディの後は気を付けた方がいいですよ。」
同伴者が小さな声で云った。
彼のティ・ショットは皆の期待通りに
ティグランドをわずかに越えただけだった。
アッハッハッハー
とみんな声を出して笑った。
大タタキをしてその次のホール・・・
またバーディが来た。
次のロングはまた大タタキ
次のショートはパー
同伴者が彼のスコアを付けながら云った。
「3、8、3、8、3と来たか。
この次は「8」だろうな。」
2000.6.13(はれ)
『世界一飛ぶ球』
サイパン帰りの彼は
箱から新しいボールを取り出した。
「世界一飛ぶ球だって。」
「世界一・・・ですか。」
キャデイさんは笑いをこらえながら聞き返した。
「そう、世界一飛ぶ球”スーパー・ゴリラ”って云うんだ。」
2000.6.11(くもり)
『組み合わせ変更』
「なーんか疲れた顔してるわねー」
「もう、そりゃ〜大変だったんですよ・・・」
「そーそー、疲れたー」
先に帰って来ていたさつきちゃんとゆきちゃんは
とっても疲れた顔をしていた。
「わたし、後ろから来てたけど、大変そうだったね。」
「えっ、あのバック・ティから来てるの、そうだったんですか?」
さつきちゃんがびっくりした顔で云った。
「うん、どうーして?」
「楽そーだなーと思ってうらやましくて見てたんです。」
「スタート前にコンペの組み合わせがあって・・・
わたし3人だったのに4人になったのよー」
「わたしもすごい人もらっちゃいました。」
「何?すごい人って?」
「毎ホール、レディース・ティまでしか飛ばない人です。」
「・・・。」
2000.6.10
『ノー・タッチ』
「キャディさん、ノータッチ?」
「はい、ノータッチですよー」
彼のボールはラフの奥深くに沈んでいた。
「キャディさ〜ん、ノータッチー?」
「はーい、ノータッチでーす。」
何度聞いてもノータッチだよ!
2000.6.8(くもりのちあめ)
『パートさんの白髪』
「もう、今日のお客さんったら〜失礼しちゃう!」
「・・・。どーした?」
ときおり、自分のことを「姫」と呼ぶ”かーちゃん”は
わたしの目の前に座るとわざとらしく髪をかきあげた。
「キャディさん、オレと同じくらいの年でしょ?だって。
え〜〜〜っ?お客さん何歳ですか?って聞いたら
39って云うわけよ。
あ〜ら、わたしまだ、32です!って云ったら
嘘付け!って云うのよ!」
「はいはい。」
そりゃ〜、その身体とそのふてぶてしさは
それくらいの年に見られても仕方ない。
「失礼しちゃうと思わない?
それにね、キャディさん枝毛あるよって云うのよ!
しかもグリーンでよ!」
「あ〜ら、わたしなんか”キャディさん、白髪あるよ”
って云われたことあるわよ。」
Kさんはパートのボスだ。
「カートを運転してたら後ろの座席から云うのよ。
あら、目に付いたら抜いて下さい。って云ってやったわ。」
わたしは食べ物が口から出て来そうになった。
さすがKさん。
「でもね、追付かないって。」
皆、おかしくって吹き出した。
それを聞いていた同じくパートのやおちゃんは
「わたし〜、白髪あるって云われたとき・・・
苦労してますからって云ったわ。」
「家建てたからね。」
パートさんたちは深刻な顔をして云った。
一瞬の沈黙の後、
かーちゃんがまたおかしな事を言い出した。
「後半のキャディは交代しますって、云ったら〜
お客さんが替わらないで後半も一緒に来てよっていうのよねー
駄目です〜次が決まってますから〜って云っても
キャディさんがいいって聞かないもんだから
あら、お客さんわたしのこと誘惑してるんですか?
わたし、人妻ですよ、つったら笑ってた。」
ぶっっ。
「・・・食べてるときに変な事云わないでよ。
かーちゃんにはかなわないわ。」
「さて〜、姫はスタート時間だからもう行くわねー」
「はいはーい、ばいばい姫。」
全く、どこが”姫”なんだ・・・。
『魔球』
それは8番ホールのセカンド地点でのことだった。
打ち下ろしのセカンドはグリーンもうけているので
どうしてもピンを狙って行きたくなる。
ピンはちょうど左のガード・バンカー越しに切ってあった。
130ヤードの打下ろし、そして風はフォロー。
打った球はピンに向かって一直線!
誰もが”ベタピン”かと注目していた。
「あ!消えた・・・。」
そのとき彼はそう呟いた。
ショートして球は手前のバンカーに入ったのだが
白い球とバンカーの白い砂が重なって消えたように見えたのだ。
「消えたって・・・。」
「魔球?」
キャディさんと同伴者は顔を見合わせた。
「・・・。」
ガックリ肩を落とす彼をよそに
キャディさんと同伴者は「魔球」が壷にハマって
笑いが止まらなくなった。
笑い過ぎてすみません。
2000.6.6(はれ)
『ティ・ショット』
「バックしたら罰金として10円ずつやるよ。」
スタート・ホールで彼は同伴者の他の三人にそう云った。
バックしたら?とはどういうことなのか
その場にいたキャディさんは首をかしげた。
まさかボールが後ろに飛ぶなんて・・・
そんなことって、いや、ありうるかもしれない。
キャディさんは彼のティ・ショットに注目した。
バック・スィングをして〜
球に当たった!
球は前に飛んで行った。
ちゃんと前に飛んでいるではないか。
「はい、30円」
同伴者の一人が低い声で呟いた。
後ろに飛んだのは彼、そのものだった。
ティ・ショットをした瞬間に
彼は後ろに飛び上がる「くせ」があったのだ。
2000.6.4(くもり)
『競技会』
県体の地区予選とは云っても・・・
毎年、何にも知らない人たちがやってくる。
「わたし〜、今日でコース10回目なんですけど〜
宜しくお願いしまーす!」
その女性はそう云った。
まあ、コース初めてって云われるよりはいいだろう。
とキャディさんは思っていたが・・・
しかし、知らないということはやっぱりよくないことだ。
「駄目〜っ!駄目ですよっ!」
キャディさんはびっくりして叫んでしまった。
「え?だって〜、この草打つときに邪魔なんですけど・・・」
「・・・草を抜いたらペナルティを取られるんですよ!」
「え?そーなんですかー」
グリーンではもう一人の女性競技者に何度も注意されていた。
「ごめんなさい、後ろから見ないでくれる?」
パターをしようとすると
真後ろに来て座り込んでラインを見るのだ。
ティグランドでも真後ろで素振りをぶんぶんしては怒られていた。
「打つときに後ろで素振りしないでもらえます?」
「・・・すみません。」
競技に出ようというのならルールとマナーはよく勉強して来た方がいい。
知らないからと済むことではない。
|