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2000.4.29(はれ)
『天プラ』
最終ホールの長い左ドック・レックの
ティ・グランドでのことだった。
「明日につながるドライバーを!」
お決まりの決め台詞を云うと
その人はドライバーを振り回した。
クラブ・フェイスは球の下を抜けた。
全員が空を見上げた。
天ぷらだ。
「高い高〜い!」
同伴者一人が大きな声で云った。
球は舞い上がり、そしてフェアウェイに・・・
「バア〜」
落ちた。
「それを云うならいないいないバアじゃない?」
打った本人が突っ込みを入れた。
2000.4.28(はれ)
『足元』
「キャディさ〜ん、どれくらい切れる?」
御夫婦でいらしたお客さまで奥様は
自分がどっちを向いてパターをしているのか
ときどきわからなくと云った。
キャディさんはボールを拭きながら
「そういうときは足元に向かって打ってみて下さい。」
と云った。
「この辺りですね!」
キャディさんはピンを持って切れそうな辺りに足元を置くと
奥様に告げ、こんどはピンを抜いて
旦那様の方に歩いて行く。
その間に奥様にパットをしてもらい
キャディさんは旦那様にパターを渡して
ボールを受け取るとそれを拭いた。
旦那様はものすごく真剣にラインを読んでいる。
「キャディさん、足元かな?」
キャディさんはボールを旦那様の手に渡しながら
「そう・・・ですね〜足元はもうないですけど。」
2000.4.27(くもり)
『打ち込め!』
コンペの1組目だった。
2組目がなかなか後ろから付いて来ない。
前半は3ホールも空いた。
後半のイン・コースに長いミドルがあった。
レギュラーから404ヤードでなかなか2オンしない。
2組目がグリーンにいて、3組目がセカンド地点で
グリーンが終わるのを待っていた。
1組目はゆっくり茶店に寄って次のホールのセカンドに
カートで走っているところだった。
ちょうどカート道の真下が長いミドルだ。
「おーい、どーせとどかないんだから打っちゃえよ〜!」
カートから一人が叫んだ。
「まーだ、200以上あるのに乗るわけないって!」
待ってる組は苦笑いしている。
「打ち込んで一人くらい殺さないと早くならないぞーっ!」
「・・・。」
それは言い過ぎと云うものだ・・・。
2000.4.25(はれ)
『42でも』
70過ぎのおじいちゃんは
オフィシャル・ハンデが「3」である。
コンペでたくさんの人と握っているらしかった。
ショート・ホールで後ろの組が追い付いて来たところで
「おい、おまえOUTはいくつ叩いたか?」
と多分30才くらい歳の離れた人に云った。
(30才離れてても相手は40才・・・)
「はい、42です。」
「ほ〜、42か。
どーやったらそんなに叩けるものかの〜!」
口の悪いじいちゃんだった。
「O.B.でもしたんだろ?」
じいちゃんの同伴者が云ったが
「O.B.なしで42です。」
後ろの組の人はそう云った。
「おやじはO.B.して39だぞ!」
「はあ、申し分けありません。」
よくわかんないけど謝っていた。
2000.4.23(はれ)
『シングル』
やっかいな人が来た。
3バックの組にシングルさんが入ることになった。
「キャディさん、今日は御迷惑をかけます。」
え?なんだか今日はいい人じゃないか。
「前からまわったことないからね。」
「・・・。」
この一言がよけいなのだ。
「試合の前だから調整中だしね。」
あ、っそう。
「試合って、何の試合なんですか?」
同伴者の一人が聞いた。
「九アマです。」
「ほ〜、九アマですか!」
「決勝は宮崎ですよ。」
・・・。
おーい!まだ予選もあってないのに、もう決勝の話しかい!
これだからなー。
「犬は元気か?」
・・・。
顔、見る度に「犬は元気か」って毎回聞くしね〜。
「上りか、下りか?」
「・・・。」
見ればわかるでしょうが。
もう、何年来てるのよー。
2000.4.21(あめのちはれ)
『トップ』
「お疲れさまです。」
そう云ったさつきちゃんは
なんだか元気がなかった。
「お客さんに何か云われた?」
図星だ。
さつきちゃんの目が釣り上がってきた!(笑)
「距離が合わないんですよー。」
「あらら。」
すかさず先輩キャディが3人で話を聞く。
「お客さんと距離が合わないのは仕事しずらいね〜」
「なんて云われたのよー」
「キャディさんはいつも距離を大きく云うって、云うんです。」
それからはさつきちゃんのオン・ステージが始まった。
「でも〜、トップしてるんですよ!
わたしはきっちり距離を云ってるのに
アプローチ、全部トップしてるんです!
なのに〜、ここのグリーンは止まらないから、とか!」
「朝の雨で、あんなにグリーンがやわらかいのにね。」
ゆかちゃんが口を挟んだ。
「そうですよね!止まる球を打てないだけだろボケッ!
って感じなんですよ。
ショートなんか、絶対距離合わないですよ!
だってトップなんですもん、合うわけないですって!」
「あっはっは!ショートは絶対合わないっていうのいいね。」
「笑ってる場合じゃないですよ、あとハーフ一緒なんですから。
その人だけグリーン周りでいつもバタバタしてるんですよ、
トップからトップですからね、
グリーンに乗るのが一番遅いんですよ。」
「なるほど。」
お姉さんキャディは全員頷いた。
「一度、きれいなアプローチをしたんですね、
高い球で、ちょっとショートでしたけど。
そしたら「上がり過ぎた」って。
それが当たり前のアプローチじゃ〜って
云おーかと思いましたよ。
トップするたんびに大きい、大きいって
ムカ付くくらい毎回云われるんですよ、
わたし、思いきって
”トップじゃ、ボケッ!”
って云ってやろーかと思いましたよ。」
「云えば良かったのに。」
「云えるわけないじゃないですかーっ!」
「そーよね〜」
「客商売の辛いとこね。」
2000.4.20(はれ)
『キーパー』
グリーン・キーパーはグリーンを管理する責任者だ。
グリーンの芝の病気や快復具合を見てまわりながら
外部からお招きした専門家の方達と
グリーンのチェックをしながらコースを
視察プレーすることになった。
しばらくプレーを続けて行くと
お客さまがキャディさんに歳を聞いた。
「27です。」
「えーっ!?」
キーパーが歳を聞いてびっくりした。
「・・・失礼な、いくつだと思ってたんですか全く。」
キャディさんは云った。
「まだ二十歳くらいだと思ってた。」
「・・・。」
キャディさんはキーパーを睨んだ。
「キャディさんたちもゴルフするの?」
お客さまがまたキャディさんに聞いた。
「ええ、もう、ほんのちょっとですけど〜」
キャディさんはにっこり微笑んで答えた。
「しょっちゅうまわってるじゃない!」
「・・・。」
キーパーは更にキャディさんをて敵にまわすことになった。
2000.4.18(はれ)
『物忘れ?』
OUTコースをハーフ上がって来ると
少しおくれて同じ時間に出たあやちゃんが
INコースから帰ってきた。
「もう〜〜〜〜、助けてーっ!」
「どうした?」
「もう、じーちゃんが一人いるんだけど
今、したことを忘れるのよ!」
「忘れるって?」
「ボール、打ったくせに
”キャディさん、オレのボールがない!”
って云い出すのー!
”キャディさん、オレのボールをどこにやった?”
って、そんなのわたしが知るわけないでしょ!」
「もしかして、ボール打ったことを忘れてるの?」
「信じらんないけどそーなのよ!」
「・・・。」
あちゃ〜
「それにね、残り150ヤード!って云ってるのに
SW取ってって云うのよ。
だからわたしね、150ヤードですよ?
SWでいいんですか?って確認したの。
いいからSW持って来いって。」
あやちゃんはくたびれた顔で話を続けた。
「SWで打って、”あら〜”って自分でクラブを見て
”あ!SWだった!”って、あったり前に決まってるじゃん
SW持って来いって云ったのは自分なんだから。」
「そりゃあ〜仕方ないわよねー。」
「なのに!”キャディさんがSWを渡した!”って言い出すのよー」
もう、おかしくって聞いてる方は笑いが止まらない。
「もしかして、それも自分で云ったことを忘れてるとか?」
「・・・そーなのよ〜!”オレは云ってない!”って云うのよー
他のお客さんがね、”あんたが云った!”
って云ってくれて助かったけど。
信じらんないでしょー。
”キャディさん、オレのボールをどこにやった?”
なんて・・・初めて云われたわよ。」
あやちゃんはじーちゃんだけにマジでキレらんないしねー
と肩をすくめた。
2000.4.15(はれ)
『こんなお客さん』
18ホールのラウンドが終わると一段落する。
一番最年少のさつきちゃんは
「今日のお客さん、変な人だったんですよー」
と大きな瞳で語りだした。
「どこが変なの?」
仲良しのゆかねえちゃんが聞くと
「まず〜、わたしのことを「社長!」って呼ぶんですぅ。」
「ぶっっ」
仕事が終わると”イラスト・ロジック”にハマっている
ゆきちゃんが下を向いたまま吹き出した。
「社長、パター取ってください!とか云うんですよ。
社長って・・・ええっ?わたしですか?って聞いたら
社長、またまた御冗談を!って云うから
冗談か〜って思ったら、社長しかいないじゃないですか!って。」
「・・・。」
お姉さんキャディ一同、顔を見合わせて笑い転げた。
「でもって、ホール説明を全部一人でやっちゃうんですよー」
「いるね〜、そういう人!」
「便利でいいじゃん。」
これはクールなゆきちゃん。
「で、終わったら・・・
社長、こんなもんでどうでしょう?
ってまたわたしに聞くんです〜」
「変な人〜!」
「ドライバーを途中で「封印」する人いない?」
ゆかちゃんが云った。
「います、いますー!途中で封印するなら
はじめから封印してて欲しいですよねー!」
さつきちゃんは叫びまくった。
「途中で封印を解く人もいるじゃないですかー!
使ったら最後!前に進まないんですよねー!
あげくにドライバーでシャンクした〜とか云って!
もう、最悪なんですよー!」
「いる、いる〜」
一同頷くだけであった。
2000.4.14(あめのちはれ)
『茶店』
コンペの最後の組だった。
あっという間に2ホール離れた。
どの組も前の組に付いて行ってるのだから
あんまり離れるわけにも行かないが
初心者が2人もいる上にO.B.の連発で
前に進みそうにもない。
こういうときには「急いでくれ」と云うのは厳禁だ。
舞い上がってるところに急げと云っても
もっと舞い上がってしまって遅くなるだけだ。
お客さまのペースを壊さないように
プレーをさせることが先決だ。
が・・・そこに立ちはだかるのは「茶店」!
ゴルフにきたら「茶店」に寄ることを楽しみにしてる方が多い。
「茶店」に寄ることはゴルフの一部のように思ってる方もいる。
が、しかし・・・後ろの組もペッタリくっついて来てる以上
茶店に寄ることは不可能だ。
キャディさんは4人のお客さまをカートに乗せたまま
誰もいないグリーンを見つめて
「あっれ〜!前の組は早いですねー
もうグリーンにいないなんて早過ぎますよねー
茶店は〜いいですね!」
わざとらしく茶店通過!
「えっ、ちゃ、茶店通過ですか?」
後ろの座席に座っていた一人が
すごくがっがりしたようだったが無視!
そしてオナーのティ・ショット・・・
彼は、オナーの彼は、ティ・ショットを終えると
茶店に向かって走り出した!
うっ、一人脱走!
しかし、キャディさんは後の3人が打ち終わる頃には
戻って来るだろうと思いなおした。
ところが彼は戻って来なかった。
茶店の中でどうやら「茶そば」を食べてるらしい。
「行きますよー!」
と外から声をかけても一心不乱に「茶そば」を食べている。
「僕もお腹減ってるのに〜」
さきほどキャディさんに無視された人が呟いた。
「行きますよー!」
キャディさんと残された3人はカートに乗り込んで
待っていたがなかなか戻ってくる気配がない。
「仕方ありませんね、置いて行きます。」
「・・・え?」
キャディさんはカートを発車させた。
お客さんをおいてきぼりにするキャディさんって・・・!?
2000.4.13(はれ)
『1度で2度笑う』
「おはようございます。」
キャディさんはお客さまと顔を会わすと
そう云って挨拶をした。
「おはよー、最近痩せたんじゃない?」
「太りました。」
キャディさんは素早く小声で言葉を返した。
「あ〜、一年振りに来たな〜っ」
「・・・。」
ったく〜
しかも初めて顔を会わせるのに
痩せたか太ったかわかるわけないでしょうーが!
「調子はどうですか?」
同伴者にそう聞かれると
「全然駄目だね、まあ軽く380ヤードってところ?
ガッハッハッハッハー」
キャディさんも同伴者もつられて大笑いしてたら
「2回でね。」
「・・・。」
一同、絶句した後にまた笑わなくちゃいけない。
まったく・・・
1度笑いを取ってさらにもう1度笑わせるのだ。
キャディさんは一日笑いっぱなしだった。
2000.4.12(はれ)
『MS』
M・・・メンバーであるということ。
S・・・シニア、得に70才以上の方のこと。
MS・・・う〜ん、おじいちゃんかぁ。
キャディさんはお客さまに会う前に大丈夫かなー
と心配していた。
だって70才以上のおじいちゃんが2人も!
しかし、キャディバックを積み込むと
なかなかハイカラなもの(クラブ)が入っている。
キャロウェイのホークアイとか・・・
それにしても前半のプレーを見て
キャディさんはびっくりしてしまった。
70過ぎのじーちゃんの飛ばす距離じゃない!
なんかおかしい。おかしいおかしいと思いながら
後半の茶店で前の組に追い付いた。
「ねえ、ねえ、わたしはじめてこの二人に付くんだけど」
「はじめて?」
前の組のキャディさんが驚いた、
「結構、来てるわよ〜。◯◯さんなんて
シニアの九州チャンピオンになったの知らないの?」
「・・・。」
もう、絶句するしかない。
「良かった〜スタートする前にゴールド・ティすすめないで!」
「・・・あんたねー、知らないとはいえそれは〜」
前の組のキャディさんが笑い出した。
ああ〜、おかしいと思ったもん!
16番のロングホールは513ヤードで
レギュラーからだと2オンが可能だ。
前の組のキャディさんはセカンド地点で手を上げて合図した。
もう、打ってもいいわよ!という合図だ。
70過ぎのじーちゃん2人、2人揃って狙いの左の木を飛び越えて行く。
絶好の位置に付いている筈だ。
カートでぶ〜んっとセカンド地点に行くと
・・・なんと前の組に2本揃って打ち込んでいるじゃないか!
「す・・・すみませ〜ん!」
キャディさんは前の組に慌てて謝った。
じーちゃん2人も帽子を取って謝った。
すると・・・前の組のお客さんが反対に帽子を取って
「いや〜、若いもんが恥ずかしい限りでして・・・
素晴らしい当たりですねー感激しております。」
・・・打ち込まれて感激する前の組みはなんじゃ?
2000.4.11(はれ)
『欠席』
5組のコンペの最終組はスタート時間がせまっても
なかなかお客さまが揃わない。
ティ・グランドにはカートが4台並んで
次々にスタートして行く。
あと一人・・・。
最後の一人がまだチェックインしていない。
ティ・グランドには残るカートはあと一台。
その組のお客さまが全員揃ってから
クラブチェックの伝標を4人分(一組)
一緒に出すことになっているため
クラブチェック標にチェックが出来ない。
クラブをチェックしていないということは
お客さまのクラブを確認していないため
キャディさんはスタートすることが出来ない。
・・・キャディさんは決めた。
「おいて行こう!」
時間通りに来ない客なんておいて行ってもいいのさ、フン!
「お待たせしました〜」
ティ・グランドに行ったときには
前の組もスタートした直後だった。
「申訳ございませんが、まだお一人見えてないのですが・・・」
キャディさんは心にもなく申訳なさそうな顔をした。
「え?あと一人って、今日は欠席ですが」
「・・・。」
な、なんですって?
「あの〜、ご連絡を受けておりませんが・・・」
「あ、忘れてました!」
よくもぬけぬけと・・・
スタート前から気分悪いったらありゃしない。
2000.4.10(はれ)
『通信販売』
クラブが17本も入っているのは・・・
オーバーにもほどがあるってもんだ。(>14本まで)
「ドライバー、スプーン、クリーク・・・」
キャディさんはクラブのチェックをしているところだった。
「さ〜って、初めて使うクラブで練習でもやってみよう!」
「・・・。」
キャディさんのチェックする手が止まった。
「これと〜、これと〜新しく買ったクラブなんだぁ!」
「まあ、ピカピカですねー」
キャディさんは取りあえず気分を壊さないようにそう云った。
「だってまだ打ったことないんだもん!」
「・・・。」
あ、そー!心の中ではそう呟いていた。
「ところでキャディさん、これは何?」
「何って・・・えーっと、13度ですか、スプーンかな〜
うんん、これはブラッシーくらいじゃないでしょうか〜。」
新しいウッドのヘッドを見せてくれたので
キャディさんはロフトを見て答えた。
「なるほど!書いてないからわかんないんだよねー
じゃあ、これは?」
「24度ですから〜クリーク・・・よりちょっとありますね〜」
「ふ〜ん、通信販売で買ったんだ。」
「はあ。通信販売ですか。」
「これもこれも、これも、通信販売。」
「はあ。」
次々にクラズを指差して教えてくれた。
「パターが2本入ってますけど・・・」
「ああ、それも通信販売!」
じゃなくて〜!どっち使うんだよー!
「実はね、これも通信販売!」
・・・自分の着てる服までかい。
2000.4.9(はれ)
『わらび』
バック・ティから194ヤードのショートホールで
その人は4番アイアンを握っていた。
「おー、わらびがいっぱいあるぞ〜!」
ティ・グランドの後ろの崖では
わらびが沢山取れる。
「お〜、これはすごいなー」
と皆が崖の下を向いた瞬間・・・
「あっ・・・。」
し〜ん・・・
「・・・。」
ああ〜・・・キャディさんは、
めまいがした。
「落ちちゃった。」
4番アイアンを握っていた人が呟いた。
「落ちちゃいましたね・・・」
キャディさんも崖下を見下ろしながら云った。
すると
「じゃ〜、何番で打つ?」
「・・・。」
もう、一同、とってもとっても疲れてしまった。
「おまえなっ!なんだその突っ込みは!
面白すぎるぞ!」
4番アイアンを落とした本人が一番に笑い出すと
あとはもう、なにがなんだかおかしくて
4人とキャディさんはお腹をかかえて笑い転げた。
※この後落とした本人が4番アイアンを崖の下から自力で取り戻してきました。
2000.4.8(はれ)
『今日のお客さん』・パートさん編
サザエさんみたいなくるくるパーマの
パートさんのやおちゃんは
「ただいま〜」
と帰って来るなり椅子に腰をかけた。
「今日の定食は何?」
と聞くので向いの席に座っていた
キャディさんは「煮込みハンバーグよ!」と答えた。
「お客さんどんな?」
ついでにそう聞いた。
「もう、も〜う、疲れるの!」
「あらら。」
やおちゃんは帽子を取って肩をすくめた。
「でもさ、3バックで出たんじゃ・・・」
「それがね、うちの組は5人いるみたいよ!」
「・・・最悪。」
「あっはっは〜」
大声で笑ったのはパートさんで最年長の
いまピーだった。
「うちはさ〜面白いよ、今日は。
本当に面白いのよ〜
よく喋るし面白いのは面白いんだけど
面白いだけ!」
「面白いだけって云うのもヤーね〜」
「そーそー、でね、あんまり喋ってうるさいから
一番うるさい人にスタート時間30分遅く云って来ちゃった。」
「・・・。」
さすがパートさん、やることが違う。
「どんな風に面白いの?」
やおちゃんが聞いた。
「それがね、笑った顔が元に戻らなくなるときない?」
「・・・はぁ?」
「顔が笑ったまんま、元に戻らないくらい面白いのよー」
「それはいまピーのが年だから
顔の筋肉が戻るの遅いだけじゃないのー?」
「まあ〜やおちゃん、云ってくれるじゃない
そんなこと云うと打ち込んでやるわよー」
「ああ、いいわよ!
打ち込んでよー
その方がお客さんちょっと早くなるかも!」
「O.K!援護射撃ね!」
「・・・。」
パートさんパワーには負ける・・・。
2000.4.7(はれ)
『今日のお客さん』・社員レストラン編
「おかえり〜ゆきちゃん。」
一つ前の組を連れているゆみちゃんは
後から帰って来たゆきちゃんに云った。
「ただいま〜。もう、このコンペいやだ〜!」
お客さまが休憩が入ったときに
キャディさんたちも急いで食事を取る。
今日の社員レストランの定食は生姜焼きだった。
「そんなに下手なの?」
一緒に食事をしている別のキャディさんがゆきちゃんに聞いた。
「下手っていうか〜、遅いの。
あのね、ゆみちゃんとこに一人かまえてから遅い人いるでしょ!
あの遅い人シングルだって!
うちのお客さんが云ってたよ!」
こうしてハーフ上がって来てから
互いのお客さんの情報交換が行われる。
「え〜〜〜っ!?そんな腕じゃないよ!
何かの間違いじゃないの?」
「でも〜、うちのお客さんが云うんだもん。」
ゆきちゃんは箸を振り上げながら言い返した。
ゆみちゃんはショートホールを思い出しながら
「あのショート、見てたでしょ?
バンカーに入れて、出たと思ったらグリーンオーバーして
乗せようとしたらチョロってさ〜
もう、乗るまで何回かかったと思ってんの!」
思い出したら一緒に怒りまで込み上げて来るらしい・・・。
「それでシングルって云われてもね〜
信じろって云うほうが無理よっ!」
次から次に止まらなくなるゆみちゃんは〜
「あげくの果てには「風」のせいにするんだよ!」
「・・・。」
周りで聞いていたキャディさんたち一同
目が点になる。
そして呆れて大笑いだ。
「風のせい?」
「自分のせいでしょうよ。」
「頭くるね。」
「でしょ?でしょ?」
ゆみちゃんは皆の同意が得られると食事に専念する。
今度はゆきちゃんが
「あのあとねー、うちのお客さん・・・」
話はショートホールに戻る。
「打ち下ろしみて110ヤードです、って云ってるのに
3番アイアンで打つのよー」
「ぶっっ」
聞いていたキャディさんの一人が咳き込んだ。
「何でまた?」
「・・・。」
ゆみちゃんは口を開けたまま
ゆきちゃんの言葉を待った。
「8番アイアンと間違えたんだって。」
ゆきちゃんは力のない声で云った。
「それって、もちろんO.B.でしょう?」
いくらグリーンオーバーしても余裕はあっても
3番アイアンで打って残ってるほど広くはない。
「そりゃそーよ。
グリーンをはるか越えて行ったんだから。
クラブ替えたらどうですか?って云って
打ったクラブを受け取ったときに何番で打ったんだろう?
って思って見たの。
そしたら3番持ってんだから。」
「・・・。」
再び食事中のキャディさんたちは沈黙する。
「ゆきちゃんが渡したわけじゃないんでしょ?」
「そーよ、自分で間違えて取ったのよ。
これでわたしのせいにされたらその場でキレてるわよ!」
「でもさー、普通は気づかないのかなー?」
「だよねー、3番だよ?
かまえて気づくでしょ!」
「長さだって違うんだからねー」
延々とキャディさんたちの会話は続く・・・
2000.4.6(はれ)
『男と女』
188ヤードの谷越えのショートホールは
打ち下ろしはほとんど見なくていい。
しかもアゲンストの為、余分に見た方が良さそうだった。
男は3番アイアンでフルショットしてピンの手前10mのところに付けた。
すると女の方を見て「ドライバーに持ち替えなさい」と云った。
女は云う通りにドライバーを持つと振り切った。
球はピン奥5m辺に付いた。
「今のは230ヤードは飛んでるね!」
男は云った。
キャディさんは「なんで?」と思った。
「オレの3番アイアンは210ヤード飛ぶんだ。
君は僕よりちょっと先に付けてるから
230ヤードは飛んでる計算になる。」
どういう計算なんだか
・・・キャディさんは黙って聞いていた。
いくらアゲンストとはいえ210ヤードもあるとは思えない。
あんまり面白いことを云うので
こういうときは意地悪をしたくなるものだ。
次のロングホールのティ・グランドに行くと
「左のバンカーまで210ヤードでとどきますのでご注意下さい。」
とさり気なく付け加えた。
この後のショットが楽しみである。。。
2000.4.4(くもりのちあめ)
『78』
朝の8時から休憩なしで
ひたすらコースをわまりプレーを続ける。
「鉄腕レース」なるもの。。。
3時過ぎくらいから雨が降り始めた。
しかし、「鉄腕レース」に挑む彼等に雨など関係なく
ただ、プレーを続ける。
前回のチャンピオンである彼等は一日で「78ホール」
という記録を打ち立てた。
当たり前のことだが
ゴルフは18ホールで1ラウンド
36ホールで2ラウンド
78ホールというのは
36を2回やってもまだ4ホールもあるのだ。
今日の彼等のプレーがどこまで続いたかはわからない。
キャディさんたちは皆、就業時間が過ぎたので
帰ってしまったからだ・・・。
2000.4.2(くもちのちあめ)
『バック・ティ』
最終組の彼等はショート・ホールで言い出した。
「キャディさん、バックティって10ヤードくらいしかかわんないね。」
「・・・そうですね。」
キャディさんはこれから彼等の言い出すことが
なんとなくわかるような気がしていた。
「ものは相談なんだけど〜」
きたきたきたっ。。。
キャディさんは笑顔のまま頷きながら聞いていた。
「バック・ティから打ってもいい?」
「いいですよー!」
ほら〜、云うと思った!
(このクラブではハンデにかかわらず希望者は
バックティからのラウンドを許されていた)
4人は大喜びでさっそくバック・ティからの距離を聞くと
クラブを持ち替えてティ・ショットを始めた。
谷越えのショート・ホールはピンまで188ヤード。
谷を越えるのに150ヤードくらいで
普通に打てば越える距離の筈なのに・・・
1人は1回で終わったが
あとの3人のティ・ショットが終わらない。
「キャディさん、いつまで打てばいい?」
・・・いつまでって・・・そりゃあ〜
「越えるまでです。」
「だよね。。。」
2000.4.1(はれ)
『ニューボール』
白いセルシオが玄関に滑り込んできた。
「おはようございます!」
キャディさんたちは車のトランクを開けると
キャディバックやカバンやシューズを取り出した。
「やあ、おはよう!」
お客さまは車から降りると
ニューボールの入ったケースを差し出して
「これも入れておいてくれるかな」
と云った。
「かしこまりました。」
3人のうち1人のキャディさんが受け取った。
「最近、腰が痛くて〜」
「まあ。」
「胃も痛くて〜」
「飲み過ぎですか?」
「・・・。」
お客さまはまた車に乗り込むと駐車場に向かった。
渡されたボールをキャディバックに入れようとしていた
キャディさんが云った。
「どうしましょう。
ボール、いっぱい入っていて
これ入らないんですけど。」
「・・・。」
3人のキャディさんは黙ってしまった。。。
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